ホーム・アンド・ジャーニー

ふるさとの珠洲(すず)と、そこから出てそこへと帰る旅にまつわるあれこれ。

東北旅ショートノベル:6日目「岩手の人とカッパと(全文)」

最終回のみ読みたい方はこちら。 www.nouvellemer.jp 1 「お兄ぢゃん、おもしれえ時計してっなあ」 遠野駅の駅舎を出ると、すぐに声をかけられた。声の主は客待ちのタクシー運転手のおじちゃんで、花壇に腰掛けて暇そうにしている。隣には同業者が煙草をふか…

東北旅ショートノベル:6日目「岩手の人とカッパと(最終回)」

第1回 www.nouvellemer.jp第2回 www.nouvellemer.jp第3回 www.nouvellemer.jp第4回 www.nouvellemer.jp第5回 www.nouvellemer.jp(承前) 「今変なところから声が聞こえたような」 ゆっくりではあるが、貴族の一人が僕たちのいるところまで歩んできているの…

東北旅ショートノベル「6日目:岩手の人とカッパと(5)」

第1回 www.nouvellemer.jp第2回 www.nouvellemer.jp第3回 www.nouvellemer.jp第4回 www.nouvellemer.jp(承前) 「しかたねぇな。帰るしかねぇか」。坂を下りながら、カッパが残念そうに言う。 「いえ、僕はもう十分です」。心にもないことだが、僕は、あと…

東北旅ショートノベル:6日目「岩手の人とカッパと(4)」

第1回 www.nouvellemer.jp第2回 www.nouvellemer.jp第3回 www.nouvellemer.jp(承前) それが建築の発する光だとわかるまでに、僕は数十秒ほどかかったように思う。はじめは、瓦が太陽光を反射しているだけのように思えたのだが、色が違う気もする。瓦の反射…

東北旅ショートノベル「6日目:岩手の人とカッパと(3)」

第1回 www.nouvellemer.jp第2回 www.nouvellemer.jp(承前) 随分長いこと水の中を流されていたと思う。たぶん、人間が普通に息を止めていられる時間を遠に超えていただろう。そのせいで、僕は意識を失ったような気がする。といいながら、今はこうして大きな…

東北からのアイム・ホーム

(カッパのは話の続きはちゃんと書いています。まとまったら、また後日こちらに載せます。家に帰ったのにそのままカッパの話を続けるのもあれだったので、帰宅してのことを簡単に。) 家に帰るまでが遠足だとよくいう。 以前、旅の準備が好きだ、あれこれと…

東北旅ショートノベル「6日目:岩手の人とカッパと(2)」

前回のお話。 www.nouvellemer.jp(承前) 爬虫類のように見えるが、よく見るとくちばしが付いている。そして、体は緑色だが顔は赤い。さらに、頭にぬるっと湿った皿状のものがある。皿の淵にはふさふさとした毛が生えている。カッパだ。 「そうだよ。カッパ…

東北旅ショートノベル「6日目:岩手の人とカッパと(1)」

「お兄ぢゃん、おもしれえ時計してっなあ」 遠野駅を出ると、すぐに声をかけられた。声の主は客待ちのタクシー運転手のおじちゃんで、花壇に腰掛けて暇そうにしている。隣には同業者が煙草をふかしている。僕はその言葉が自分に向けられたものかどうか、最初…

東北旅ショートエッセイ「5日目:青森の悲しさとかわいさと」

青森の人たちはみな、うら悲しい目をしている。 かっこつけて文学的な表現をしたいわけではなく、実際そう見えるのだからしかたがない。旅人らしく彼らに話を振ってみても、みな申し訳なさそうに一言なにかを返すだけで、話は長く続かない。たぶん迷惑してい…

東北旅ショートエッセイ「4日目:青森に今度は西行と鴨長明が現れた」

ぼくがちょうど五所川原から青森駅に着いて、ホテルにチェックインしようと向かっているとき、夕食を済まそうと思い立ってガイドブックを広げると、よさそうなお店が近くにあることがわかった。「マロン」という喫茶店で、名物はジャマイカンカレーらしい。…

東北旅ショートエッセイ「2日目:秋田の味」

秋田にはずっと興味があった。その文化に、である。 なまはげに代表されるような伝統風俗、いぶりがっこやきりたんぽなどの食べ物、土方巽の舞踏(写真集『鎌鼬』)、そして民謡。これらの文化は、ぼくの中ではひとくくりにつながっていて、ひとつの大きな「…

東北旅ショートエッセイ「1日目:山形と五月雨」

昨日の夜からむっとした空気が街を覆っていて、なんとなく過ごしにくかった。明日は雨かもしれない、と思ったらやはりそうで、昼過ぎから小さい雨が地面を湿らせはじめた。それはぼくが県中部の村山駅を出て、最上川に北上しているくらいのときだった。 そこ…

思い出はどんな味

東北旅出発前として、昨日「知らないところに向かって」と題した記事を書いたが、実はまだ東北には達していない。石川から向かうとなると、その前に新潟を通らなければならないからだ。 通るというか、ぼくはここでまず1泊した。 新潟は、ぼくが大学生として…

知らないところに向かって 〜東北旅出発前〜

予定を立てるのが好きだ。 この日にはこことここに行く、というような目星はみんなつけるだろうし、行きたいところのだいたいの時間から、電車の乗り降りの細かい時間まで。それを決めて、紙に記録する。以前は時刻表とにらめっこだったが、今ではスマホのア…

東北に行ってこよう

ここのところずっと、ああ、旅に出たい旅に出たい、とばかり考えて悶々としています。 地方を巡る一人旅は、考えてみれば4年ほどしておらず、遠くへ行くといえば東京かインドでした。地方に行っていない。ああ、地方に行きたい。 名もない駅前の定食屋でカツ…

インドを旅したことについて

旅人はみな、インドを目指す。 このブログのタイトルは「ジャーニー」であって、「トリップ」や「トラベル」ではありません。 一般的に、Tripは「(短い)旅行」、Travelは「(普通の)旅行、旅行する」ということなので、「(長い)旅」を意味するJourneyと…

ごあいさつ

こんにちは。 この度、このブログを開設しました、こえといいます。 このブログでは、ぼくの住んでいる珠洲(すず)という土地と、そこを拠点に出発する旅のことを主に書いていきたいと思います。 珠洲は、能登半島のいちばん先っちょに位置する、人口一万数…